ことのはじまり
「blueoverのスニーカーをしばらく履いてもらって、使用感をレビューしてくれませんか?」
structのコイデさんからそう声をかけてもらったのは、今年の5月の終わり頃のことでした。
そのときの心中は、うれしさ半分、とまどい半分といったところでしょうか。
もともとコイデさんとは知り合いで、structのこともよく知っていたので、オファーしてもらえたことはとても嬉しかった。その一方で、靴に関してはあまり明るくないから、ちゃんとレビューできるかが不安でした。うまく、期待に応えられるだろうか。
……かなり、悩みました。でも、今はこうしてパタパタとキーボードを叩いています。決め手は、コイデさんの「好きなように書いてください。良いところも悪いところも、全部含めて」という言葉。ここまで信頼してもらえて、物書きとして冥利に尽きるなと思いました。そして、その気持ちに応えたいなあと強く感じました。
気になるところも含めて、率直な言葉で書き綴っていこうと思っています。どうぞよろしく。
- blueoverについて
- 〈スニーカーを作る技術を日本に残したい〉という理念のもと、2011年に大阪で誕生したブランド。〈用の美〉や〈侘び寂び〉など、日本独自の美意識を下敷きにしたものづくりをモットーとしている。
2019/6/6
この日、blueoverの〈mikey〉が家に届きました。さっそく開封するとしましょう。
……その、夜明け前の海のような青さが、僕の心をそっと撫でました。なんて美しいブルーなんだろうか。
さっそく試し履きしたいところですが、撮影を控えているので我慢。やっぱり、なるべく綺麗な状態で撮ってあげたいですよね。でも、仕事のことはちょっと脇において、早く履いてみたいなあ。
それにしても、靴でこれだけワクワクするのはずいぶん久しぶりな気がします。最初に書いたように、僕はそこまで靴に詳しくありません。正確に言うと、こだわらないようにしています。仕事柄、毎日徒歩で長時間移動するせいで、すぐに履物をダメにしてしまうからです。だから、いつもシンプルで使いやすい、どこにでもあるようなスニーカーを選ぶようにしています。そこに遊び心が介在する余地が無いから、靴選びでときめくこともすっかり無くなってしまいました。
そんな靴事情に疎い僕でも、分かることがひとつだけあります。それは、このスニーカーが、かなり面白そうなプロダクトだということ。シンプルではあるけど、平凡ではないというか。早く使って、その直感を確かなものにしたいと思いました。
- mikeyについて
- 普遍的な使いやすさと美しさを体現した、blueoverを象徴するモデル。どこまでもシンプルな意匠でありながら、他のどのスニーカーとも違う独自性を有している。ちなみに、そのキュートな名前は〈グーニーズ〉に登場する〈マイキー〉に由来するとのこと。
2019/6/8
我慢しきれずにちょっとだけ履いてしまいました。まず驚いたのは、そのしっかりとしたホールド感。足首をがっしりと掴まれているかのような履き心地で、非常に頼もしい。なんというか、〈堅牢〉という形容がしっくりきます。
その一方で、(長いあいだ歩くと、しんどいかも? )という懸念も生まれました。いつもはゆったりした作りのものを選んでいるから、そのフィット感が妙に気になるというか。またもや、うれしさ半分、とまどい半分という心境に。
(まあこのあたりは実際に使ってみないと分からないよね……)と思いながら、mikeyを靴箱にしまいました。
これはまったくの余談ですが、その日のメモを読み返すと〈足首を掴まれて不死をもたらす川に浸されたアキレスになった気分〉と書いてありました。なんの話だ?
つづく……
- 渡辺平日(Heijitsu Watanabe)
- 日用品愛好家。美しい道具や民藝品の話題に反応して振り返ります。
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- 野口羊(Yo Noguchi)
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